インフルエンザは、普通の風邪に比べ感染力が強いため注意が必要です。
流行する時期には、罹った人も罹っていない人も感染防止や予防に努めることが重要になってきます。
そのためには、インフルエンザの感染力がどれほどなのか?なども含めきちんとした基礎知識を身に付けておくことも大切です。
今回は、インフルエンザの感染力、うつる期間や注意点についてご紹介します。
インフルエンザがうつる期間は?
インフルエンザの感染の多くは、「飛沫感染」によるものが最も多く、それ以外にも「接触感染」や「空気感染」による感染もあります。
飛沫感染とは?
感染者の咳やくしゃみ、会話などをした時に発生する飛沫(小粒子)に含まれている菌やウイルスを鼻や口から吸い込むことにより感染することで、飛沫の数は、1回のくしゃみで約200万個、咳で約10万個と言われています。
また、飛沫の大きさは5ミクロン以上(1ミクロン=1000分の1ミリ)で、飛距離はおよそ1~1.5メートル程度の範囲におよぶとされています。また、鼻や口だけでなく「目」などの粘膜から直接侵入することもあるようです。
接触感染とは?
皮膚や粘膜の直接的な接触や、手、ドアノブ、手すり、便座、スイッチ、ボタン等の表面を介しての接触で病原体が付着することによる感染のことです。
手についたウイルスを目や鼻、口などに無意識にもっていくことにより、粘膜からウイルスが侵入します。
尚、ウイルスは乾燥した環境中では、長時間活動することができるので、感染者が使用した電話やドアノブ、食器等にウイルスが付着して、後からそれを触ったヒトに感染が起こり、感染が拡大することがあり得ます。
空気感染とは?
感染者の排出する飛沫核に付着している菌やウイルスを鼻や口から吸い込むことにより感染することです。
この「飛沫核」の大きさは1~5ミクロンの微細な粒子のため、長い間空中に浮遊するために、感染者と同じ空間にいる人がウイルスを吸入することによって感染しやすくなります。場合によっては「飛沫核感染」とも言われます。
狭い気密な部屋や空気が低温で乾燥していると、菌やウイルスはより長く感染性を持ち続けることができるため、このような条件が揃うと空気感染が起こることがあるとされています。
飛沫核とは?
菌やウイルスを含んだ飛沫から水分が蒸発した直径5ミクロン以下の小粒子で、空気中を長く浮遊するもののことを指します。
感染者が、咳やくしゃみをすると、その飛沫が空気中に放出され、そのなかに菌やウイルスが含まれています。
この時には、菌やウイルスの周りには水滴がついていて、大きさは5ミクロン以上の粒子となっていて、水滴がついている状態のため、落下速度は、30~80cm/秒ほどとなります。
それが、乾燥した環境中では、水滴がついている状態から水滴が蒸発しやすくなり、菌やウイルスだけになるため、大きさも微細になります。
また、落下速度は0.06~1.5cm/秒となり、空気中を長時間浮遊することになるのです。
インフルエンザへの感染を防ぐためには、これらの感染経路をできる限り阻止することが大切ですし、インフルエンザに感染した人が他の人に感染させる菌やウイルスをいつからいつまでの期間、保有しているのか?ということも対策を考えるうえで非常に重要になってきます。
インフルエンザの潜伏期間中の感染力は?
「潜伏期間」とは、インフルエンザに感染してから、体に症状が現れるまでの期間のことを言い、インフルエンザの潜伏期間は、通常1~3日程度とされ、一般的には、潜伏期間が極めて短いことが知られています。
インフルエンザの感染から治癒までの流れは?
インフルエンザウイルスに感染した場合、約1~3日の潜伏期間の後、インフルエンザを発症します。
発症後、約1~3日間程度の期間で、突然の高熱(38度以上)や、全身倦怠感、食欲不振などの「全身症状」が強く現れます。
そしてその後、咳やのどの痛み、鼻水などの「呼吸器症状」が現れ、なかには、腰痛や吐き気などの「消化器症状」を訴える人もいます。
最終的に、10日前後で症状が落ち着き治癒するのが一般的なインフルエンザの症状の経過です。
インフルエンザの潜伏期間中のウイルスの状態は?
通常1~3日程度とされるインフルエンザの潜伏期間中、人間の体内ではどんなことが起こっているのでしょうか?
主に「飛沫感染」により広がるインフルエンザウイルス。人間の身体に侵入したウイルスは、上気道(喉と肺の入り口の間の管)の粘膜に付着し、約20分で細胞の中に入り込みます。
その後、細胞内に侵入したウイルスは、まずは自分の仲間を増やそうと「増殖」を始めます。
この時、インフルエンザウイルスは驚異的なスピードで増殖するのが特徴でもあります。
一般的に、1つのウイルスに感染すると、8時間後に100個程度、16時間後には1万個に、24時間後には約100万個にまで増殖すると言われています。
通常、ウイルスが100万個以上になると自覚症状が現れ、インフルエンザ特有の症状を発症するとされています。
このように、驚異的なスピードで増殖するインフルエンザウイルスは、早期に発症するケースが多く、最短で16時間前後から、最も多いのが2~3日経過後に発症するケースです。
なぜインフルエンザウイルスの感染力は強いの?
インフルエンザウイルスは、自分の力では増殖することができず、他の生物に感染し、感染した細胞の中で自分の遺伝子のコピーを作り増殖していきます。
インフルエンザウイルスの遺伝子はRNA(人の遺伝子はDNA)という遺伝子で、このRNAは間違ったコピーが発生しやすく、これを「変異」といい、インフルエンザウイルスは、常にこの変異が起こっており、人の1000倍の確率で起こっているといわれています。
さらに、驚異的な増殖スピードで常に変異と増殖を繰り返して、徐々にマイナーチェンジしながら生き延びていくのです。
でも、通常はマイナーチェンジだけの変異だったものが、数十年に一度、フルモデルチェンジの変異を起こすことがあります。
インフルエンザウイルスにも種類があり、人に感染する種類は「A型・B型・C型」の3つです。
その中でもA型は、人のみに感染するものではなく、「トリ・ブタ・ウマ・クジラ・アザラシ・ミンク」などにも感染が確認されています。
A型は、人以外の生物にも感染できることで、別の動物が持つウイルスと結合し更に強いウイルスへ、といった感じで変異も独自の進化を続けるのです。
これまでの主な例として、それまで鳥だけに感染していた鳥インフルエンザウイルスが、フルモデルチェンジの変異で人に感染するようになり、さらに人から人に効率よく感染するように変化したのが、数年前に猛威を振るった「新型インフルエンザウイルス」です。
「新型インフルエンザウイルス」は、これまでのワクチンがまったく効かず、世界中で大流行しました。
このように、インフルエンザウイルスは、その驚異の増殖力と変異という武器で、姿形を変幻しながら存在しているのです。
一度インフルエンザにかかったのに、何度でもかかることがあるのは、このように変異したインフルエ ンザウイルスに感染していることも理由のひとつなのです。
インフルエンザの潜伏期間中もうつるの?
上記でもご紹介したように、インフルエンザウイルスは、驚異的なスピードで増殖するのが特徴です。
たとえ1個でも24時間後には100万個(インフルエンザ特有の症状を発症するレベル)の数までに増殖します。
そのため、潜伏期間中といえども、インフルエンザウイルスがうつる可能性は十分にあります。
特に、発症する直前などは、症状が出ていないぶん自覚症状がないため、対策を講じない人が多いですが、ウイルスを排出している可能性は十分にありますので、マスクの着用などは必須となります。
ポイント
「もしかしたら!?」とインフルエンザへの感染を疑う場合には、感染拡大防止のエチケットとして「マスク」の着用を心掛けましょう。
インフルエンザの解熱後の感染力にもご注意を!
通常、体内に入ったインフルエンザウイルスは、猛烈な勢いで増え続け、症状が出てから1~3日後(24~72時間後)に最も数が増え活発に活動します。
ウイルスが活発に活動している時期(症状も強く現れている時期)は、ウイルスの排出量も活発で、ウイルスの排出量のピークは発症後24~72時間後とされています。
インフルエンザウイルスの活動が弱まってくると、症状も落ち着いてきます。
でも、症状が落ち着いたからと言ってウイルスの排出が止まったわけではありません。
インフルエンザは、解熱後、排出されるウイルス量は減少しますが、解熱後もウイルスを排出しますので注意が必要となります。
インフルエンザの臨床研究などによると、インフルエンザ発症後5日間を経過すると、ウイルスの排出量はある程度収まるとの研究結果の報告があります。
このような研究報告を基に、感染拡大の予防策として、 「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」は、ウイルスを拡散する恐れがあるため十分な注意が必要とされており、子供の出席停止期間の基準もこれに則り施行されています。
特に、解熱後に咳やくしゃみ等の呼吸器症状が続いている場合には、マスクを着用するなどの周囲への感染拡大に配慮が必要です。
まとめ
インフルエンザウイルスは、微細ながら驚異的なパワーを持つウイルスです。
感染についての正しい知識を備えて、インフルエンザへの感染予防や感染拡大の防止に役立てましょう。