「食中毒」と言っても、食中毒を引き起こす「菌」はたくさんあります。
それぞれの菌によって、発症する時間も違えば、発症した場合の症状や期間も違ってきます。
それぞれの食中毒菌に対して、正しい知識で適切に対処しないと命にかかわる危険もあるので注意したいですね。
今回は、食中毒菌別の潜伏期間について&発症までの時間や症状についてご紹介します。
食中毒の潜伏期間や主な症状は?
「食中毒」といってもその原因となる物質や感染源も様々です。
食中毒を引き起こす原因や物質や感染源についての詳細は下記の記事をご参照ください。
>>>【食中毒の基礎知識】食中毒の種類や特徴&発生時期について
食中毒は、その大部分を「細菌性食中毒」と「ウイルス性食中毒」が占めています。それぞれの細かな種類がありそれにより発症までの時間や症状なども違ってきます。
下記にまとめていますのでご参照ください。
ウイルス性食中毒
ノロウイルス
- 主な原因食品等:二枚貝(カキ、ハマグリ等)、二次汚染された食品、経口感染など
- 多発時期:秋~春先(10月~3月頃)
- 潜伏期間:24~48時間
- 主な症状:吐き気、おう吐、腹痛、下痢、発熱(38度以下)など
- 特徴:
◆発症後3日以内で軽快し予後は良好ですが、発症当日の症状が激しい。
◆ウイルス量が少量でも感染し、感染力が強い。
◆ヒトからヒトに感染する(便、吐物などを介して)
◆死滅には85度で1分以上の加熱が必要。
ロタウイルス
- 主な原因食品等:二次汚染された食品、経口感染など
- 多発時期:春先(3月~5月頃)
- 潜伏期間:24~72時間
- 主な症状:下痢(3~8日程度続き、激しい時には白色で、米のとぎ汁のような便が特徴)、おう吐、発熱など
- 特徴:
◆乳幼児期(0~6歳頃)にかかりやすい病気で、乳幼児のほとんどが感染する。
◆症状が長引いたり、合併症などにより時に重症化することがある。
◆ヒトからヒトに感染する(便、吐物)
◆予防接種(任意・有料)がある。
細菌性【感染型】食中毒
病原性大腸菌
- 主な原因食品等:井戸水、魚介類や肉類など多種の食品に生息
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:3~7日程度
- 主な症状:【発症時】下痢、腹痛、風邪のような症状を伴う場合もあり、【発症2~3日目】血便、激しい腹痛など
- 特徴:
◆激しい腹痛を伴った水様便(水っぽい下痢)が頻回に起こり、まもなく血便(血液の混じった下痢)が出ることが多い。
◆成人の場合、感染しても無症状だったり軽い下痢で終わることもある。
◆発熱があっても一過性で、高熱が出ることはまれ。
◆ヒトからヒトに感染(便など)する。
サルモネラ菌
- 主な原因食品等:鶏卵、肉類(特に鶏肉)など
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:半日~2日程度
- 主な症状:腹痛、嘔吐、発熱、下痢など
- 特徴:
◆おへそ周辺の激しい腹痛を伴い、嘔吐、発熱、下痢などの症状を引き起こす。
◆熱は38度から40度近くの高熱が出る。
◆下痢は水のような便で、血や膿が混ざることもある。
◆通常は3日~4日程度症状が続いたあと次第に落ち着くが、なかには、1週間程度ひどい状態が続く場合もある。
◆子供や高齢者など免疫力が低い人は、細菌性髄膜炎などの原因となる菌血症を引き起こして重症化することもあるので注意が必要。
腸炎ビブリオ菌
- 主な原因食品等:魚介類(特に生食)
- 多発時期:夏場(7~9月)
- 潜伏期間:10~20時間程度
- 主な症状:腹痛、下痢、嘔吐、発熱、場合によってしびれやチアノーゼなど
- 特徴:
◆発症時は激しい腹痛に襲われる。
◆通常、2~3日程度で自然治癒する。
◆子供や高齢者など免疫力が弱い人や肝臓病を患っている人などは、まれに敗血症を発症することがあるので注意が必要。
カンピロバクター菌
- 主な原因食品等:食肉(特に鶏肉)、飲料水、ペットなどあらゆる動物にも常在
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:1~7日程度
- 主な症状:下痢、嘔吐、発熱、頭痛、血便など
- 特徴:
◆重症化すると大量の水様性下痢を生じる。
◆通常、1週間程度で自然治癒することが多い。
◆ギラン・バレー症候群などの重篤な合併症状を引き起こすこともあるので注意が必要。
ウェルシュ菌
- 主な原因食品等:大量調理などで加熱不十分な調理品、水や土壌など
- 多発時期:季節を問わず発生
- 潜伏期間:6~18時間程度
- 主な症状:腹痛、下痢など
- 特徴:
◆軽い腹痛と水のような下痢を繰り返し、通常1~2日程度で治癒する。
◆一般的に食中毒のなかでは症状は軽い部類になる。
◆大量に調理するような場面での発生が多く、別名「給食病」とも呼ばれる。
赤痢菌
- 主な原因食品等:飲料水、海産物(特に貝)、生野菜など
- 多発時期:季節を問わず発生
- 潜伏期間:1~3日程度
- 主な症状:全身の倦怠感、悪寒、高熱、下痢など
- 特徴:
◆赤痢菌には、志賀赤痢菌、フレキシネル菌、ボイド菌、ソンネ菌の4種がある。
◆菌の種類によって症状に差が大きく、最も病原性の強い「志賀赤痢菌」は、腸内からの出血による血便、しぶり腹(トイレにいった後でもすっきりせずまたトイレに行きたくなる状態)があらわれることがある。
◆日本ではソンネ菌(70~80%)が多く、症状が軽く、軟便や軽度の発熱で経過することが多い。
コレラ菌
- 主な原因食品等:飲料水、海産物(特に貝類、エビ)など
- 多発時期:高温多湿時期
- 潜伏期間:2~3日程度
- 主な症状:下痢、嘔吐など
- 特徴:
◆突然の下痢と嘔吐で発病する。
◆大量の水様性下痢に伴う脱水症状に注意が必要。
◆腹痛はなく、体温が低下。
◆眼球が陥没し、声がかすれ、皮膚がしわしわになり、さらに進行すると意識障害やけいれんなどがみられ、最終的には死に至る場合がある。
エルシニア属菌
- 主な原因食品等:食肉・加工品(特に豚肉)、乳・乳製品など
- 多発時期:冬場(12~2月)
- 潜伏期間:1~10日程度
- 主な症状:腹痛、下痢、発熱など
- 特徴:
◆発熱を伴い虫垂炎のような激しい腹痛に襲われる。
◆下痢も血便となる場合もある。
◆発熱とともに発疹が出ることも多い。
リステリア・モノサイトゲネス菌
- 主な原因食品等:乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品など
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:1~90日程度
- 主な症状:発熱、悪寒、倦怠感、嘔吐、下痢など
- 特徴:
◆発症時は高熱(38℃以上)や頭痛、悪寒、倦怠感、下痢などインフルエンザに似た症状がある。
◆通常、5~10日程度で症状は治まる。
◆特に妊婦がかかりやすく、胎児に害を及ぼすことがあり、流早産の原因になるばかりではなく胎児髄膜炎を発症することもある。
細菌性【毒素型】食中毒
黄色ブドウ球菌
- 主な原因食品等:人の皮膚や下水などに生息
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:1~3時間程度
- 主な症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など
- 特徴:
◆潜伏期間が短くすぐに発症。
◆吐き気や嘔吐、腹痛や下痢が1~3日程度続く。
◆高熱は少ないが、まれに発熱やショック症状を伴う場合もある。
セレウス菌
- 主な原因食品等:土壌細菌のひとつ。土壌・水・ほこり等自然環境に広く生息
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:【嘔吐型】2~3時間程度【下痢型】8~16時間程度
- 主な症状:【嘔吐型】吐き気、嘔吐など【下痢型】腹痛、下痢など
- 特徴:
◆嘔吐型と下痢型がある。
◆【嘔吐型】潜伏期間2~3時間程度で吐き気、嘔吐を発生。
◆【下痢型】潜伏期間8~16時間程度で腹痛、下痢を発生。
◆【嘔吐型】、【下痢型】ともに重症化することはまれで軽症で治ることが多い。
ボツリヌス菌
- 主な原因食品等:嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成。酸素のない状態になっている食品(缶詰、ビン詰め、レトルトなど)が原因となりやすい
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:8~36時間程度
- 主な症状:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、めまい、頭痛など
- 特徴:
◆発症時は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状の後、めまい、視力低下、嚥下困難などの神経麻痺症状が現れ、場合によっては呼吸困難になって死亡する場合もある。