食中毒は、思いもよらないタイミングで襲ってきます。
自分では気を付けていても、外食やイベントなどで口にした食べ物で感染したり、「食中毒の危険は身近なところにある!」と思っていても大袈裟ではありません。
前回、食中毒を引き起こす主な原因の「細菌性」と「ウイルス性」についての種類や主な症状についてご紹介しました。
そこで今回は、食中毒の【抑えておきたい予防ポイント!】や【いざという時に知っておきたい対処法】について種類別にご紹介します。
食中毒の予防ポイントや対処法を菌別にご紹介!
「食中毒」は、「もしかして!?」と思った時や「おかしいな!?」と感じたら素早く対処するのが一番です。
前回、主な食中毒を引き起こす種類や主な症状をご紹介していますので下記の記事もご参考にされてください。
>>>【食中毒の基礎知識】食中毒の種類や特徴&発生時期について
「食中毒」といってもその原因となる物質や感染源は様々ですので、まずは心当たりのある原因について把握するのはもちろんですが、正しい対処法も大切です。
下記に食中毒を引き起こす主な原因の「細菌性」と「ウイルス性」の予防ポイントや対処法についてご紹介します。
ウイルス性食中毒
ノロウイルス
- 主な原因食品等:二枚貝(カキ、ハマグリ等)、二次汚染された食品、経口感染など
- 多発時期:秋~春先(10月~3月頃)
- 潜伏期間:24~48時間
- 主な症状:吐き気、おう吐、腹痛、下痢、発熱(38度以下)など
- 予防ポイント:
◆貝類を生で食べない。
◆経口感染防止のため手洗いや除菌対策を徹底。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。 - 対処法:
◆下痢や嘔吐は我慢したり、下痢止めを飲んだりせず、ウイルスを体外に排出させる。
◆嘔吐は1~3日程度、下痢は1週間程度で治まるので、素の期間脱水症状にならないよう水分補給に気を付ける。
◆感染拡大防止として安静にして、排出物は正しく処理し、手洗いや除菌対策を徹底する。
ロタウイルス
- 主な原因食品等:二次汚染された食品、経口感染など
- 多発時期:春先(3月~5月頃)
- 潜伏期間:24~72時間
- 主な症状:下痢(3~8日程度続き、激しい時には白色で、米のとぎ汁のような便が特徴)、おう吐、発熱など
- 予防ポイント:
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆予防接種(任意・有料)を受ける。 - 対処法:
◆とにかくウイルスを体外に排出させる。
◆小さい子供は体全体における水分の割合が高く体力もないため、脱水になりやすいので、早めに病院に連れて行く。
細菌性【感染型】食中毒
病原性大腸菌
- 主な原因食品等:井戸水、魚介類や肉類など多種の食品に生息
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:3~7日程度
- 主な症状:【発症時】下痢、腹痛、風邪のような症状を伴う場合もあり、【発症2~3日目】血便、激しい腹痛など
- 予防ポイント:
◆生野菜などはよく洗い、食肉は中心部まで十分加熱する。(75℃1分以上)
◆冷蔵庫内の食品もこまめに点検し、できるだけ早く食べる。
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。(熱湯消毒やアルコール消毒など) - 対処法:
◆突然重症化しやすいためすばやく医療機関を受診し、医師の指示に従う。
サルモネラ菌
- 主な原因食品等:鶏卵、肉類(特に鶏肉)など
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:半日~2日程度
- 主な症状:腹痛、嘔吐、発熱、下痢など
- 予防ポイント:
◆食肉類の生食は避ける。
◆食肉類は中心部まで十分加熱する。(75℃1分以上)
◆卵は冷蔵庫保存で、できるだけ早めに食べる。
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。(熱湯消毒やアルコール消毒など) - 対処法:
◆下痢や嘔吐は我慢したり、下痢止めを飲んだりせず、ウイルスを体外に排出させる。
◆通常であれば3~4日程度で症状は落ち着くが、脱水症状がある場合や体調が改善しない場合は、医療機関を受診する。
腸炎ビブリオ菌
- 主な原因食品等:魚介類(特に生食)
- 多発時期:夏場(7~9月)
- 潜伏期間:10~20時間程度
- 主な症状:腹痛、下痢、嘔吐、発熱、場合によってしびれやチアノーゼなど
- 予防ポイント:
◆魚介類は低温管理を心掛ける(5℃以下)。
◆魚介類を調理する時は真水でしっかり洗浄する。
◆十分加熱する。(75℃1分以上) - 対処法:
◆発症後2~3日程度で軽快するので、下痢や嘔吐は我慢せず、下痢止めなども使用せず脱水症状に気を付ける。
◆子供や高齢者、肝臓病を患っている人は敗血症の発症に注意が必要なので、早めに医療機関を受診する。
カンピロバクター菌
- 主な原因食品等:食肉(特に鶏肉)、飲料水、ペットなどあらゆる動物にも常在
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:1~7日程度
- 主な症状:下痢、嘔吐、発熱、頭痛、血便など
- 予防ポイント:
◆飲料水は煮沸消毒する。
◆定期的に水質検査を行う。
◆食肉類は十分加熱する。(75℃1分以上)
◆生食と調理した肉類は別々に保存する。
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。(熱湯消毒やアルコール消毒など) -
対処法:
◆発症後7日程度で自然治癒するので、下痢や嘔吐は我慢せず、下痢止めなども使用せず脱水症状に気を付ける。
◆子供や高齢者、1週間以上症状が改善されない場合は、早めに医療機関を受診する。
ウェルシュ菌
- 主な原因食品等:大量調理などで加熱不十分な調理品、水や土壌など
- 多発時期:季節を問わず発生
- 潜伏期間:6~18時間程度
- 主な症状:腹痛、下痢など
- 予防ポイント:
◆十分に加熱調理する。
◆調理後は早めに食べる。
◆加熱食品は短時間冷却&低温保存を心掛ける。 - 対処法:
◆発症後1~3日以内で軽快し、他の細菌性食中毒と比較すると軽症のため、安静にして脱水症状に気を付ける。
赤痢菌
- 主な原因食品等:飲料水、海産物(特に貝)、生野菜など
- 多発時期:季節を問わず発生
- 潜伏期間:1~3日程度
- 主な症状:全身の倦怠感、悪寒、高熱、下痢など
- 予防ポイント:
◆生水や生モノの飲食は避け、水は煮沸する。
◆ハエやネズミは菌を運ぶので駆除する。
◆十分に加熱する(80℃10分の加熱が必要)。 - 対処法:
◆赤痢菌は数種類菌が存在し、日本で多いソンネ菌は重症例が少なく、軽い下痢と軽度の発熱で経過することが多いため、安静を心掛ける。
◆小児と高齢者は重症化しやすいため注意が必要。
◆長期間症状が改善しない場合は医療機関を受診する。
コレラ菌
- 主な原因食品等:飲料水、海産物(特に貝類、エビ)など
- 多発時期:高温多湿時期
- 潜伏期間:2~3日程度
- 主な症状:下痢、嘔吐など
- 予防ポイント:
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。(熱湯消毒やアルコール消毒など)
◆海外での生モノの摂取は避ける。 - 対処法:
◆突然の下痢と嘔吐で発病し、下痢の回数も多く、大量の水分を失うため水分補給は必須。
◆直近に海外渡航など心当りがあれば、すぐに医療機関を受診し医師の指示に従う。
エルシニア属菌
- 主な原因食品等:食肉・加工品(特に豚肉)、乳・乳製品など
- 多発時期:冬場(12~2月)
- 潜伏期間:1~10日程度
- 主な症状:腹痛、下痢、発熱など
- 予防ポイント:
◆耐熱性はないので十分加熱する。
◆調理後はすばやく食べて、冷蔵庫での長期保存は避け冷凍保存する。 - 対処法:
◆下痢症状のみの場合は1~3日程度で自然治癒することがほとんど。
◆長期に亘って症状が改善しない場合や、症状が重い場合は医療機関を受診する。
リステリア・モノサイトゲネス菌
- 主な原因食品等:乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品など
- 多発時期:梅雨時から夏場(6~8月)
- 潜伏期間:1~90日程度
- 主な症状:発熱、悪寒、倦怠感、嘔吐、下痢など
- 予防ポイント:
◆生野菜などは十分に水洗いする。
◆十分に加熱する(70℃以上)。
◆賞味期限内に食べる。
◆開封後はすばやく食べて、冷蔵庫での長期保存は避ける。
◆冷凍庫で保存する。 - 対処法:
◆妊婦、高齢者、免疫機能が低下している人は、少量のリステリア菌でも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態になることがあるので、予防を心掛けるのが一番。
細菌性【毒素型】食中毒
黄色ブドウ球菌
- 主な原因食品等:人の皮膚や下水などに生息
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:1~3時間程度
- 主な症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など
- 予防ポイント:
◆手指に傷や化膿創のある人は調理しないようにする。
◆手洗いや除菌対策を徹底する。
◆調理器具の洗浄・除菌の徹底。(熱湯消毒やアルコール消毒など) - 対処法:
◆発症直後は強い吐き気と嘔吐がありますが、通常であれば3日程度で軽快するため、脱水症状に気を付けて安静にする。
◆発疹や血圧低下などのショック状態がある場合には速やかに医療機関を受診する。
セレウス菌
- 主な原因食品等:土壌細菌のひとつ。土壌・水・ほこり等自然環境に広く生息
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:【嘔吐型】2~3時間程度【下痢型】8~16時間程度
- 主な症状:
【嘔吐型】吐き気、嘔吐など【下痢型】腹痛、下痢など - 予防ポイント:
◆米飯や茹でたパスタなどを室温に放置しない。
◆低温保存。 -
対処法:
◆セレウス菌は細菌性食中毒のなかでも比較的軽症で、1~2日程度で回復する。
◆嘔吐や下痢が続くようであれば他の原因も考えられるため医療機関を受診する。
ボツリヌス菌
- 主な原因食品等:嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成。酸素のない状態になっている食品(缶詰、ビン詰め、レトルトなど)が原因となりやすい。いずし等
- 多発時期:夏期(6~9月)
- 潜伏期間:8~36時間程度
- 主な症状:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、めまい、頭痛など
- 予防ポイント:
◆低温保存。
◆十分な加熱。
◆原材料は新鮮なものを使用し、洗浄は十分に行う。 -
対処法:
◆この菌は極めて致死率が高いため検査および診断は常に迅速な対応が求められる。
◆この菌は極めて致死率が高いため検査および診断は常に迅速な対応が求められ、上記にあげた食品等を摂取後、体調の悪化がある場合はすばやく医療機関を受診する。
食中毒の防止には手洗いの徹底は必要不可欠
上記のように、食中毒の多くが個人の衛生管理の徹底で予防できることが多くあります。
食事の前に手洗いを実施したり、調理前や調理後など、口にするものを扱う際には、衛生面に気を配ることが大切です。
医療機関の受診も大切
食中毒と言っても、上記のように非常に多くの種類が存在します。
それぞれ、潜伏期間なども異なるため、場合によっては原因物質の判断がつきにくかったりもしやすいものです。
特に素人が判断すると大変危険ですので、「おかしいな。」と思ったら念のため医療機関を受診するのが、最良の対処法でもあります。