真っ青に澄み渡る空に浮かぶ「いわし雲」や「うろこ雲」を見ると秋の訪れを感じませんか?
夏の入道雲と違って、秋を感じる特徴的な雲ですよね。
秋の空は、「天高く馬肥ゆる秋」と時節の挨拶として用いられる有名なことわざがあるように、青く澄み渡り、空が高く感じられるのも特徴です。
今回は、秋の空を眺めながら、秋の特徴的な雲や秋の空に関するちょっとしたなぜ?やその理由についてご紹介します。
秋の空の特徴的な雲はなぜできる?
空を見上げると、1年中同じ空や雲が浮かんでいるわけではありません。季節によって見上げる空にはいろんな変化が訪れます。
季節によって、また時間によって移り変わる空の様相は、まさに自然が織りなす一瞬の芸術なのかもしれませんね。
俳人の正岡子規は、「ホトトギス」の中で「春雲は綿の如く、夏雲は岩の如く、秋雲は砂の如く、冬雲は鉛の如く・・・」と表現しています。
でもこの秋の空に浮かぶ特徴的な雲はなぜできるんでしょう?
雲のできる仕組みは?
まず簡単に雲のできる仕組みについてご紹介します。雲は、水蒸気を含む空気が上昇し冷やされることによってできます。
空気は、人間の目には見えませんが、川や海、地面から蒸発した水蒸気がたくさん含まれています。また、 空気には、水蒸気以外にも、とても小さなホコリやチリも含まれています。
この水蒸気を含んだ空気を冷やすと、チリなどの空気中のゴミのまわりに、水滴がびっしりとついて、雲粒(くもつぶ)ができます。
そしてこの雲粒が集まって、 雲ができているのです。雲粒はとても小さな水滴なので、上昇気流で空に浮かんでいることができますし、弱い横風でも流されるので雲が動いているように見えるのです。
高い山に登ると温度が下がり涼しく感じるように、空の高いところへ行けばいくほど、気温(温度)が下がります。
地球上には、横から吹く風だけでなく、上昇気流や下降気流など色んな風が吹いており、空気もこの風の力を受けて上空高く持ち上げられているのです。
雲の種類
雲は、世界で統一された雲の種類を分ける基準が1895年国際気象学会でつくられました。これは、雲の高さ、形によって10種類に分けられています。
上層雲
- 巻雲(けんうん)
- 巻積雲(けんせきうん)
- 巻層雲(けんそううん)
高度5000m以上にできる。空を広く覆う白いベール状の雲で数時間後に雨を降らせたりします。
中層雲
- 高積雲(こうせきうん)
- 高層雲(こうそううん)
- 乱層雲(らんそううん)
暗い灰色の雲で、雨雲と呼ばれています。弱い雨や雪を長く降らせたりします。
下層雲
- 層積雲(そうせきうん)
- 層雲(そううん)
- 積雲(せきうん)
- 積乱雲(せきらんうん)
入道雲とも呼ばれ、主に低い場所で発生しますが、高さが10kmを超えることもあり集中豪雨やたくさんの雪を降らせたり雷を起こします。
秋によく見られる雲は?
秋は上記の雲の種類の中でも「巻雲」「巻積雲」「高積雲」などが現れやすく、いずれも雲ができる高さが最も高い「上層雲」に属する雲が多く見られるようになります。
これらの秋によく見られる雲は、やはり気象条件の変化が大きく関係します。水蒸気量が少なく上昇気流が弱くなると、入道雲のような夏らしい雲の出番が少なくなり、「秋らしい雲」が浮かぶようになります。
また、夏から秋にかけて空の透明度が増すことによって、上空高くに存在する雲の姿を捉えやすくなるためでもあります。
一番上層に位置する「巻雲」は上空5~13キロ付近に現れる雲ですが、この上には、雲は存在しません。
秋には、いろんな気象条件が重なると、この一番高い位置に存在する雲が見える機会が多くなるのです。
イワシ雲やウロコ雲など特徴的な雲はなぜできるの?
秋によく見られる筋状の雲や、イワシやウロコなど白い小さな粒状の雲塊が蜂の巣状に規則的に並んでいる雲はなぜできるのでしょう?
これは「ベナール対流」によって引き起こされているのです。
ベナール対流とは、上と下で温度差のある流体で、下の熱は、対流によって流体上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は流体下部へと潜ることで、例として、お椀に入った温かいおみそ汁をしばらくそっとしておくと、みその小さなつぶが模様をつくっている様子を確認することができます。
これは、表面では蒸発によって温度が下がるためにおみそ汁が少しだけ重くなって下に沈み、下から少しだけ温かくて軽いおみそ汁がわき上がる「対流」という現象が起こっているためで、下降している部分と上昇している部分とがきれいに並んでハチの巣のような模様をつくりだすのです。
このような対流をベナール対流といい、大気の中でもこれと同じような対流が発生してイワシやウロコなどの巻積雲ができるのです。
秋の空が高く感じる理由は?
「天高く馬肥ゆる秋」と時節の挨拶で用いられるように、秋の空は「高い」と昔からよく言われています。
空気が澄んでいる
雲ができる仕組みでも紹介したように、私達が生活している空気中には、人間の目には捉えきれないチリやホコリ、水蒸気が存在しています。
空気中の水蒸気やチリやホコリが多ければ多いほど、空は白っぽく見え、逆に空気が乾燥して水蒸気が少なければ、その分、キレイで澄んだ青い空になります。
夏の間、日本を覆っていた暑く湿った太平洋高気圧が弱まり、西から高気圧と低気圧が交互にやってきます。いわゆる移動性高気圧で、天気は周期的に変わります。
秋になると、夏の間の湿気の多い空気に変わって、大陸から移動してくる高気圧に覆われてくるのです。
大気が安定している
春も大陸からの高気圧に覆われますが、春は雪や氷が融けたばかりで、土や砂が舞い上がりやすくなっています。春によく聞く「黄砂」もこの影響によるものです。
一方、秋は夏の間に草木が生い茂るのでホコリが立ちにくくなり、さらに、陽射しが弱まって気温が低くなることで、太陽で暖められた空気が上昇する対流の現象が起こりにくく、地面近くにある汚れた空気の層が空の低いところに留まる傾向にあります。
風が強いとチリやホコリが舞って空の青さもくすんで見えます。ですが、秋は1年で最も風が穏やかな季節で大気も安定しているため、春よりも秋のほうが、空が澄み渡り、空が高く見えるのです。
春は、空気中に土や砂などのチリやホコリが多く空気が霞みがちになり、夏は、太平洋高気圧の影響で空気中に水分が多く、透明度が低くなり、冬は空気は乾燥していますが、寒冷前線が強い傾向で低く重たい雲が日本列島を覆うことが多くなります。
女心と秋の空
女心と秋の空は、変わりやすい秋の空模様のように、女性の気持ちは移り気だという意味で用いられますが、本来は、「男心と秋の空」が原形で、このことわざは江戸時代にできました。
その時代、既婚女性の浮気は命を落とすほどの重罪でしたが、既婚男性の浮気には寛大だったこともあり、男性の変わりやすい心を例えて、女性に対する愛情が変わりやすいとして言われ、使われていたのです。
ですが、現在では「女心と秋の空」のほうがよく聞かれるような気がしますが、実際には、広辞苑などでは「男心と秋の空」の紹介が多く、「女心と秋の空」が紹介されるようになったのは、1998年頃からで、辞書によっては「女心と秋の空」は紹介されていないものもあるようです。
時代とともに女性の地位向上も実現し、恋愛の価値観も変化、多様化しています。
まとめ
暦が変わり、風が涼しく感じられるようになると、秋を感じますが、ふと見上げた空にも、秋の訪れは見つけられます。
移り変わりが早い秋の空は、いろんな気象条件や現象が重なって生まれています。
一瞬の秋の空や雲を、たまにはぼーっと観察してみるのも、秋ならではの楽しみ方かもしれませんね^^