年末を迎える時期は、会社員にとって年末調整の時期にもなります。
年末調整時の控除項目として、一般的なものに「生命保険料控除」があります。これは、特定の生命保険に加入している場合に、所得から控除され税金が安くなるもの。
でも生命保険料控除の計算は、一見すると難しく感じてしまいがちで、もっとお得になるポイントをスルーしてしまう人も多いもの。
そこで今回は、年末調整での生命保険控除の書き方&計算方法は?注意点やポイントについて詳しくご紹介します。
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年末調整 生命保険控除の書き方&計算方法は?注意点やポイントもご紹介!
生命保険料控除とは?
生命保険料控除は、生命保険や簡易保険、介護や医療保障保険、個人年金保険などの保険料を支払ったときに適用できる控除です。
控除の対象となる生命保険料の範囲とは?
生命保険料控除には「生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」の3種類があり、控除の対象となる保険にはそれぞれ下記のような条件があります。
一般の生命保険料
保険金などの受取人が、契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)とする生命保険契約等の保険料や掛金。
ポイント
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介護医療保険料
保険金などの受取人が、契約者かあるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)とする生命保険契約等の保険料や掛金。
ポイント
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個人年金保険料
個人年金として控除したい場合は、「個人年金保険料税制適格特約」がついている場合のみ申告可能です。
税制適格特約をつけるには以下の要件があります。
- 年金の受取人が契約者か配偶者のいずれかであること。
- 年金受取人と被保険者が同一人であること。
- 保険料の払込期間が10年以上であること(一時払は対象外)。
- 年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金の受取開始が60歳以降で、かつ年金の受取期間が10年以上あること。
個人年金保険で「個人年金保険料税制適格特約」を付加していない場合や、変額個人年金保険は、控除証明書に「一般用」と書かれている場合があります。この場合は「個人年金保険料」として控除の申告はできません。一般生命保険料控除の対象になります。
災害入院特約・疾病入院特約など特約を付加している場合、特約部分の保険料は個人年金保険料控除の対象とはならず、旧制度では「一般生命保険料控除」の対象になり、新制度では保障内容ごとに「一般生命保険料控除」または「介護医療保険料控除」に分類されます(※生命保険料控除の対象外になる特約もあります)。
生命保険料控除は「新契約」と「旧契約」に分けて考えよう!
平成23年12月31日までに締結した生命保険料、個人年金保険料に関しては、「旧契約」として、それぞれ適用限度額5万円で合計した生命保険料控除額は10万円です。
平成24年1月1日以降に締結した生命保険料、個人年金保険料、そして介護医療保険料に関しては、「新契約」として、それぞれ適用限度額4万円で合計した生命保険料控除額は12万円です。
上記により、その年中に支払った生命保険料は、保険契約等の締結時期または変更時期により、下記の5つに区分されることになります。
- 新生命保険料
- 旧生命保険料
- 新個人年金保険料
- 旧個人年金保険料
- 介護医療保険料
ポイント
「新契約」と「旧契約」の両方がある場合はどうなる?
生命保険料控除は上記のように「新契約」と「旧契約」があることにより、計算方法は、契約内容によって下記の3通りあることになります。
- ①旧契約のみ
- ②新契約のみ
- ③旧契約と新契約の両方
例えば、平成23年までに契約した生命保険や個人年金に加えて、新たに平成24年以降に医療介護保険の契約を締結した人などは「③旧契約と新契約の両方」に該当することになります。
その年中に、新契約で生命保険と介護医療保険をそれぞれ5万円の合計10万円支払い、旧契約の生命保険料を15万円支払っているような場合、生命保険に関しては、控除額の多い「旧契約」の生命保険を使って計算し、加えて、新たに設けられた「医療介護保険」の控除額を計算し、合計して控除額を算出することになり、この場合、生命保険に対する控除額は5万円、医療介護保険に対する控除額は4万円ですから、合計した9万円が生命保険料控除となります。
ポイント
生命保険料の控除額については下記の図もご参考に!
新契約・旧契約の生命保険料控除額
新契約と旧契約の両方がある場合の生命保険料控除額
生命保険料控除証明書のチェックポイント!
生命保険控除を受ける際には、まず、自分の支払った保険料の種類と金額を確認しましょう。
生命保険会社等から送付される「生命保険料控除証明書」にチェックポイントは記載されていますので、しっかり自分がどの保険料の区分になるのかなど下記の3つのポイントを確認しましょう。
②自分がいくら支払ったか?
③自分の支払った生命保険料は、「旧制度」か?「新制度」か?
控除額の計算は、「一般生命保険料」と「個人年金保険料」と「介護医療保険料」ごとにそれぞれ旧契約と新契約で、下記のように計算します。
生命保険料控除額の計算
新契約(平成24年1月1日以降に加入した保険)
年間の支払保険料 | 控除額(※1円未満の端数切り上げ) |
---|---|
20,000円以下 | 支払った保険料の合計額 |
20,001円~40,000円まで | (支払った保険料の合計額)×1/2+10,000円 |
40,001円~80,000円まで | (支払った保険料の合計額)×1/4+20,000円 |
80,001円以上 | 一律40,000円 |
旧契約(平成23年12月31日以前に加入した保険)
年間の支払保険料 | 控除額(※1円未満の端数切り上げ) |
---|---|
25,000円以下 | 支払った保険料の合計額 |
25,001円~50,000円まで | (支払った保険料の合計額)×1/2+12,500円 |
50,001円~100,000円まで | (支払った保険料の合計額)×1/4+25,000円 |
100,001円以上 | 一律50,000円 |
会社員Aさんは、平成31年(令和元年・2019年)に下記のような内容で保険料を支払っています。
◆旧契約の一般生命保険料:70,000円
◆旧契約の個人年金保険料:40,000円
◆新契約の介護医療保険料:30,000円
【計算例】
◆旧契約の一般生命保険料分
70,000円×1/4+25,000円=42,500円
◆旧契約の個人年金保険料分
40,000円×1/2+12,500円=32,500円
◆新契約の介護医療保険料分
30,000円×1/2+10,000円=25,000円
上記のような計算となり、合計100,000円分の控除を受けることができます。
新契約と旧契約の両方がある場合の計算方法は?
一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、旧契約と新契約の両方の契約がある場合、控除ごとに、下記のいずれかを選ぶことができます。
②新契約のみ(控除額:最高4万円)
③旧契約と新契約の両方(控除額:最高4万円or5万円)
※旧契約の限度額5万円のいずれか大きい金額が適用できるため。
会社員Bさんは、平成31年(令和元年・2019年)に下記のような内容で保険料を支払っています。
◆旧契約の一般生命保険料:120,000円
◆新契約の一般生命保険料:80,000円
◆新契約の介護医療保険料:80,000円
上記のような【新契約】と【旧契約】の両方がある場合、一般生命保険料に関しては、控除額の多い旧契約の生命保険料を使って計算し、新たに設けられた「介護医療保険料」の控除額を計算し、合計して控除額を算出します。
【計算例】
◆旧契約の一般生命保険料分
100,001円以上は一律50,000円=50,000円
◆新契約の介護医療保険料分
80,000円×1/4+20,000円=40,000円
上記のような計算となり、合計90,000円分の控除を受けることができます。
新契約の一般生命保険料に関しては、旧契約を採用したので控除の対象外となります。
生命保険控除の書き方&記入例
会社員Aさんは、平成31年(令和元年・2019年)年に下記のような内容で保険料を支払っています。
◆新契約の一般生命保険料:25,000円
◆旧契約の一般生命保険料:80,000円
◆新契約の介護医療保険料:80,000円
◆新契約の個人年金保険料:90,000円
◆旧契約の個人年金保険料:30,000円
【計算例】
◆新契約の一般生命保険料分
25,000円×1/2+10,000円=22,500円
◆旧契約の一般生命保険料分
80,000円×1/4+25,000円=45,000円
◆新契約の介護医療保険料分
80,000円×1/4+20,000円=40,000円
◆新契約の個人年金保険料分
80,001円以上は一律40,000円=40,000円
◆旧契約の個人年金保険料分
30,000円×1/2+12,500円=27,500円
一般生命保険料分と個人年金保険料分はそれぞれ【新契約】と【旧契約】の両方があります。【新契約】と【旧契約】の両方がある場合、控除額の多いほうを選択できるので、
◆一般生命保険料:45,000円
◆介護医療保険料:40,000円
◆個人年金保険料:40,000円
となり、合計125,000円となりますが、生命保険料控除の適用限度額は120,000円ですので、最終120,000円の控除が受けられることになります。
では、上記の内容を「給与所得者の保険料控除申告書」へ記入した場合の記入例を下記にご紹介します。
生命保険控除の注意点やポイント
離婚で保険金の受取人が変更になった場合は?
生命保険料控除の対象となる生計保険契約に係る生命保険料等は、その保険料等の受取人のすべてが本人または配偶者その他の親族であることが要件とされています。
離婚などにより受取人が変更されたり、親族関係に異動があった場合、離婚するまでに支払った保険料は生命保険料控除の対象となり、離婚後に支払う保険料に関しては、その保険金受取人を本人または本人の親族に変更となる場合は控除の対象となりますが、それ以外の受取人の場合は控除対象外となります。
途中解約した場合の保険料控除はどうなる?
例えば、その年の6月まで毎月保険料を払い込んでいたが、都合で7月に契約を解除した場合、本年中に実際に払い込んだ保険料であれば控除の対象となりますので、本年の1月から6月までの保険料を申告できます。
年末調整で生命保険料控除の欄が足りない場合はどうする?
場合によっては、多くの保険契約により生命保険料控除の欄が足りない場合があります。
基本的には、新契約と旧契約の保険料がそれぞれ上限額に達したら、それ以上に記入する必要はありません。
それぞれ、【新契約】は80,001円以上、【旧契約】は100,001円以上の場合は、それ以上の記載の必要はありません。
年末調整で生命保険料控除をするのを忘れた場合は?
年末調整は、師走の忙しい時期に重なるため、バタバタと気忙しく、なかには提出し損なった生命保険料控除証明書が年末調整後に出てくる場合もあります。
もし、会社に書類を提出し忘れた場合は、確定申告をすれば払いすぎた税金が還付されます。
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まとめ
生命保険料控除は、複雑に感じてしまいますが、生命保険会社等から送付される「生命保険料控除証明書」を見ながら、該当する計算方法に従って控除額を算出し、各項目を順番に書き込んでいくと、意外と簡単に記入できます。
受けられる控除はできる限り受けて税金対策したいものですね。